
松尾市長にうかがいます!「この職場でよかった」をつくる
鎌倉市役所1on1ミーティング研修
鎌倉市役所では、職員の成長支援、エンゲージメン トの向上、組織全体のパフォーマンス向上を目的に、管理職層職員が現場職員に対して1on1ミーティングを行っています。アイズプラスはそのサポートとして、2021年度より管理職の方々を対象に「鎌倉市役所1on1ミーティング研修」を実施してまいりました。
今回、鎌倉市長 松尾崇様にお時間をいただき、3年間の研修の成果と課題についてお話をうかがいました。
Q1.なぜ1on1ミーティングを導入したのか?

池照: はじめに、1on1ミーティングを導入した理由についてお教えください。
松尾市長: 組織の成長は職員一人ひとりの成長によるものが大きく、活発にコミュニケーションを取りながら創造的な仕事ができる職場環境が理想です。しかし以前から「同じ職場でも隣の席の人がどんな仕事をしているかわからない」「上司がしているマネジメントと部下が望むマネジメントがかみあっていない」など、現場のコミュニケーションの課題について耳にしていました。
特に管理職は、何をどこまで指導するかという難しさに加え、ハラスメントにならないよう言葉を選ぶ必要も出てきます。本来なされるべき対話よりもかなり手前のところで、お互いに遠慮してしまい、それが仕事上の情報の格差やコミュニケーション不足の要因になっていました。
それぞれが能力を最大限に発揮できる組織を目指して、まず職場でのコミュニケーションの課題について改善していきたいと思い、1on1を導入しました。
池照: 1on1ミーティング研修内の質問でも、みなさん同じように「どこまで踏み込んでいいのか」「そもそも聞いていいものなのか」といった悩みが多く聞かれました。
この悩みは他の民間企業も同じで、働き方も雇用形態も多様になる中、お互いに遠慮してコミュニケーションの本質に迫れない。だからこそ、1on1を型として取り入れて、その目的を研修で確認し、質を高める対話のスキルを実践的に高めていくことが求められています。
Q2.この3年間の変化をどう感じ取っているか?

池照: よりよい関係性と職場環境づくりを目指し、3ステップで1on1ミーティング研修を継続実施してきました。鎌倉市が目指す姿を示し、入門編として「1on1の目的と“聴く”」を学び、実践編として「1on1を構造化して進める」ことに集中し、そして今年は定着編として「1on1面談の質、スキル向上」を目指しました。毎回、演習を取り入れながら進め、終了後は質問受付けとともに丁寧なアンケートを実施して次の研修で振り返りながら学びを進めていくというステップです。
松尾さんはこの3年間の変化をどのように感じ取っていますか?
松尾市長: 管理職の方々に1on1を実践してみてどうかと感触をたずねると、肯定的な意見が多く出るようになってきました。「今まで部下の話をちゃんと聞けていなかったとわかった」「最初は話題が持たなかったが、続ける中で率直な話ができるようになってきた」「聴く姿勢と意識がついた」など、1on1がよい気付きや変化のきっかけになっているようです。
コミュニケーションに起因する業務課題について、もちろんゼロになった訳ではありませんが、かなり減ってきているように思います。管理職のみなさんが真摯に向き合って1on1を実践してくれていると感じます。
池照: 受講者アンケートでも、「職員一人ひとりを大事にすることが組織の力につながると理解できた」「関係性をスムーズにするために感情が必要だと感じた」「1on1の具体的な手法が学べた」などの声をいただきました。
評価面談との違いや質問スキルをどう高めるかなど、受講者のみなさんからの疑問も適宜プログラムに反映させながら計画的に進められた点がすばらしかったと思います。
実は、鎌倉市は1on1ミーティングを20分で行っています。当初、これは短すぎると感じていましたが、現場の皆さんのお話をうかがいながら工夫をしました。最大限の成果が出せるように、自分を知り、相手の感情にも着目しながら20分の中でオープニング、ボディ、クロージングして次回につなげる、という流れを構造化しました。1on1テーマシートを使用し職員の方にテーマを選んでいただき1on1を進める工夫もしています。
非常に効果があったとの嬉しいお言葉をいただいており、20分という短い時間でも継続的に実施することで関係性が高まり、価値が生み出せるのだなと、私自身もとても勉強になりました。


Q3.上司・職員の関係性への今後の期待は?

池照: みなさん1on1を実践され、関係性の質を高めているなと現場を見ていて感じます。今後、上司の方や職員の方にどのようなことを期待されますか?
松尾市長: 対話や報告の際にいろいろと考えてしまって、できるだけ注意や拒否をされないようにコミュニケーションを取る場面を目にするので、先回りせずに思ったことをパッと言いあえる関係性を築いていってほしいと思います。その関係性をもとに、業務に関する新たな気付きや出てきた課題をどんどん先に進めていってほしいです。
池照: 確かに、上司の方はどうしても先回りして、次に伝えることを考えすぎてしまったり、またはその逆に反応を考えすぎてしまって伝えるべきことを伝えられないこともありますね。1on1の良さは、対話を通して目の前の人の話に集中することです。特に、鎌倉の1on1は「相手を知る」ことがメインの目的です。目の前の人に関心を向け、そこから新たな面や強みを見つけようという気持ちで向かうことから意外な発見や深い信頼につながっていきます。
松尾市長: 1on1で印象に残っている時間があります。抽象的な言い方になってしまうのですが、ある人との対話の中で私から少し踏み込んだ質問をした時に、それまで語らなかったことを語り出してくれたことがありました。それがその場に出され結果的に問題の解決に向かったので、1対1の時間が持てて本当によかったと感じました。
池照: 1on1という相手の話に集中して聴く時間が、お互いの理解と課題の解決につながったのですね。心理的に安全を感じ、本音を語れると思ってもらえたら、それは1on1の大きな成果です。上司の立場では、1回や2回のミーティングで関係性をすぐに変えるのは難しい。定期的、継続的に時間を作って話を受け止めることで信頼が生まれてくるものですよね。
松尾市長: 3年目のアンケートから1on1の有効性を読み取ることができ嬉しく思うと同時に、場所や時間の問題、スキル不足の不安など、次の課題も明らかになりました。単なる義務や形式にならないよう、目的を意識しながら実践し続けていきたいと思います。
池照: そうですね。1on1はあくまでも手段です。私たちの目的である“組織の成長は職員一人ひとりの成長により成される”を目指し、もし他にも出来ることがあれば、ぜひ現場からも声を発して取り入れていってほしい。職員一人ひとりが心豊かに働ける、成長できる、それが組織全体のパフォーマンスにつながる市役所づくりに向かって、ぜひみなさんで一緒に進めていきましょう。
(インタビュー実施日:2023年8月)

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以下のような組織目的達成のお手伝いをしています。
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・・・ 他