
【後編】 新価値創造のための「OPEN型」人材・組織開発プログラム
~EQ開発でつくるOPENな自分×OPENなチーム~
前編に引き続き、日産自動車株式会社 総合研究所 実験試作部 大和田様・岩田様・関様より、OPENプログラム実践現場のリアルと今後の展望についてお話をうかがいました。
Interviewee:
日産自動車株式会社 総合研究所
実験試作部 第一実験課 課長 大和田 優 氏
実験試作部 第一実験課 リーダー 岩田 幸人 氏
実験試作部 第一実験課 関 健一 氏
Interviewer:
株式会社アイズプラス
代表取締役 池照 佳代
※以下敬称略
Q3. OPENプログラムで何が変わったのか?
チームや役割をこえて隣の人の動きに気持ちを向ける

池照: EQについての体系的な学び、EQI検査による自分とチームの行動特性への理解、思考や関係性の質を高め合うグループディスカッションなど、これまでチーム・組織でのワークの時間を重ねてきました。大和田さんが今一番感じているチームの変化はどのようなものですか。
大和田: まず、隣の人の動きにも気持ちが向くようになったことです。私の職場はチームプレイというよりは個の世界の仕事が多かったのですが、チームや係の枠を越えて、周囲をよく見て動けるようになったと感じます。
それから、お互いの仕事の責任や大変さへの理解も深まったように思います。OPENプログラムの他にも働きかけをしまして、例えば、多忙な時期などに公募制で仕事のサポートをしてもらう仕組みを作りました。それを活用して、別業務の人がクルマの実験を手伝った際に、「傍から見るより大変な仕事だった」と言っていました。
また、ある若手の担当者がプロジェクトを完了した際、そのプロジェクトメンバーの評価をやって教えて!と伝えると、無理です!と目を丸くしていました。これまでは評価を受ける側だけで見ていましたが、評価する側の立場を初めて理解できたそうで、いい経験だったと思います。
池照: お互いの理解と関係性を高める、すばらしい変化ですね。関さんの部門やチームではいかがですか。
関: 少しずつ変化の兆しが見えてきたと思います。それまでは、お互いに業務・プライベ-トともにあまり深く踏み込まない職場だったのですが、コミュニケーションの壁が低くなり、いろいろな話をするようになりました。信頼感をベースにして、言いにくいことも関係性や言い回しを考慮しながら切り込んでいくことができます。忙しさから元の状態に戻っている時も当然ありますが、「EQ的にどうなの」のようなワードが出たり、もうちょっと行ってみようよ、というポジティブな雰囲気になっていますね。
OPENプログラムの一環として実施した合宿やワークショップで、密なコミュニケーションの時間を繰り返し持てたのも、関係性を高める良いきっかけになりました。検査結果や感情に関する書籍を活字で見るだけでなく、やはり実際に言葉をかわし同じ事柄について考えたり話し合ったりするのが、一番身に染みて勉強になりました。答えのないテーマをみんなで話すEQダイアログワークでは、しあわせとは何かとか、普段会社ではしない話ができておもしろかったです。
池照: 答えのないテーマについてグループで話す“EQダイアログ”は、回を重ねる度に一人ひとりの異なる視点や意見が出るようになり、相互理解が進むワークでしたね。皆さんの表情がどんどん変化していったことが印象的でした。
プログラムを通じてチーム全体でOPENな関係性を開発する
池照: 岩田さんのチームの関係性はいかがですか。
岩田: かなりオープンに、いい関係性で仕事ができるようになりました。メンバーからいじられることが増えましたね。先ほども、会議で席を外すと伝えたら、「私は先に帰りますので、ごゆるりと行ってきてください」と言われました。
池照: グループ全体で気兼ねなくコミュニケーションが取れていますね。
岩田: お互いの特性への理解、ありたいビジョンの共有、良い関係性を継続する仕組み化のためのグループワークなどを通じて、チーム全体でOPENな関係性を開発しているところです。逆に、プログラムにまだ参加していないメンバーや、達成目標が異なるチーム・部門と組むと、共通認識を持てていないためか、コミュニケーションに難しさを感じることがあります。そこは私たちのチームから少しずつでも良い影響を広げていきたいです。
そういった意味で、先輩がもう少し言語化して後輩に伝えよう、相手が習得しやすいように言葉にしていこうよと、働きかけをしているところです。関さんの話にあった背中を見せる育成方法に加えて、先輩から積極的に言語化して伝えることも、変化につながるのではないかと思います。そして、若いメンバーにも、若手が持っている最新知識をベテラン勢にぜひ教えてほしいと伝えています。
池照: 若手だからこそ最新の知識を持っている、ベテランは体験からくる知識や実績を持っている、知識へのリーチの種類が異なるのですね。実績を持ったトップが決断していく組織から、多様なメンバーが意見を出しあいフラットに進める組織への移行の難しさを、他社や他業種でもよく耳にします。立場や年数にこだわらず、共通の目標に向けて、心理的安全性のある環境と連携が必要ですね。
Q4. 私たちがこれから目指すOPENとは?
共通のビジョンに向かって関係の山を登りきる

池照: 今後は、OPENを組織全体に浸透させるフェーズに移ります。その組織浸透フェーズで、大和田さんが優先順位高く取り組んでいきたいことはなんでしょうか。
大和田: OPENプログラムを始めた頃、感情をキーにして何がしたいのかビジョンを共有するために、『関係の質』という山にメンバー全員でアタックしていく絵をスケッチブックに描きました。その絵を見せて、どうやって山頂に向かってアタックしていくかを示しながらやってきました。この3年で、気持ちよく協力しあえる関係性ができ、大きな成果が残せるようになってきています。
そして周りからも、OPENやEQへの関心が徐々に湧いてきているのを感じます。プログラムに参加したいと自分から言ってくれる若手もいて、EQという言葉と効果が組織に浸透してきました。
課内でまだEQに関わってない半数のメンバーに「なんかいいことやってるぞ」と思って参加してもらえたら、『関係の質』山は登り切ったと言えるかなと思います。それを2023年 ニッサンイヤーに達成したい。 『関係の質』の山を登り切った先には、『思考の質』山、『行動の質』山、『関係の質』山と、ダニエル・キム氏の『成功の循環モデル』を模した山なみが連なっています。登り切った先はアップダウンの少ない縦走ですので、EQの素養を身に着けたメンバーで力を合わせて素晴らしい結果を創出できれば、OPENの4つの質がうまく機能したすばらしいチームになると期待しています。
池照; 想いを載せた手描きの絵、ビジョンのパワーを感じます。想いを発信することが「なんかいいことやってるぞ」という興味関心に繋がります。最初から結果を追うよりも、互いの興味関心を糸口に関係づくりからスタートすることで小さな変化=関係の質の変化につながりますね。
お互いの夢を叶えあえるチーム・組織を目指す
岩田: 私の人生として目指すところは、かわいいおじいちゃんですね。自分と相手の気持ちを汲みながら、人の役に立ちながら生きていきたいです。
仕事では、チームや個々人としてこんなことがしたいんだという夢や目標を、チーム全体で共有して進められるようになるのが理想です。どうしても、仕事量や人員、できるできないの話を先にしてしまいがちですが、お互いを信頼して覚悟を決めて、叶えられる方法をみんなで考えながら進んでいけるといいなと思います。
そのために、年度の始めに必ずグループミーティングをして、会社や課の方針、自分の役割や責任、モチベーションや与えたい影響などを一人ずつ発表して共有しています。OPENプログラムで実施したタニモヤや改善会議で、ささいな気持ちもあえて伝えあってみんなで解決していくワークでの経験も参考にしています。ちょっとした我慢や引っかかりも口に出せる、さらに仕事がやりやすい関係性を目指して、試行錯誤しているところです。
池照: ちょっとしたことが言えるかどうかは、関係性としてとても大事だと私も感じています。タニモヤや改善会議といったEQワークでは、ともすると見過ごしそうな小さな変化を言語化していくので、個性やこだわりが見えておもしろいですよね。そこに向き合って一緒に解決していくのは、お互いを知るいい時間になります。
OPENな自分×OPENなチームでハートの世界に挑む

関: この先の時代は、技術開発だけでなく、それを社会に適応させていく力、外部と気持ちよく協働していく能力が求められます。そのために、まずは自分のチームで気持ちよく協働し、アウトプットのレベルを上げる。もっとアクティブに、もっと楽しく連携し、仕事で良い成果を出していきたいです。
他社が実施しているEQプログラムの内容や効果についても興味があります。社外にも目を向けて、視座を上げていきたいと思っています。
池照: OPENプログラムと関連して、ビジョンを可視化する未来新聞作りや、みんなのモヤモヤを話し合うタニモヤなど、多彩なワークがあります。それから、社外や違う世代の環境に越境して、多様なバックグラウンドを持った人たちと社会課題についてディスカッションするワークや、学校への出張授業なども大変有意義だと思います。そういった社会に開いている活動をEQを起点にして実施継続することができます。
最後に、今後OPENというキーワードをどういった位置付けにしていきたいですか。
大和田: OPENは心開くというメッセージと、EQの4つの要素を指しています。その中で、難しいけれどやらなければいけないと強く思うのは、4つ目のN、Narrative(世界観共有)です。
いま企業は、利益や台数といった硬い目標だけではない、ハートの世界に入っていると感じます。いい商品は必須で、そこにストーリーとお客様が魅了される新たな価値がなくては売れない。ナラティブというスキル・知識の習得は必須です。
そういったストーリーやハートの世界に挑む方法論のひとつとして、OPENなビジョンを実現していきたいと思います。私たちもこの3年間の実践の成果を、社内外に向けて積極的に発信していきます。
池照: ハートの世界、いい言葉ですね。「OPEN」をキーワードに、ぜひ形にして発信していきましょう。
※社名・役職などはインタビュー当時のものです。(インタビュー日:2023年3月)
アイズプラスからのご紹介
アイズプラスでは、EQ(感情知性)を人材開発、組織開発、人事制度設計に導入し、
以下のような組織目的達成のお手伝いをしています。
・企業理念の策定、浸透支援
・リーダーシップ開発/リーダー育成
・ダイバーシティ&インクルージョン/多様性施策構築、浸透支援
・エンゲージメント施策、タレントマネジメント施策構築と浸透支援
・「心豊かに働く」をベースとした人事制度の構築
・・・ 他