
【後編】わたし流「関係性強化」セオリー
~MTの関係性を高める感情のいかし方~
前編に続き、三菱電機トレーディング株式会社代表取締役社長・瀬尾忠生様と取締役総務部長・井上博史様に、関係性向上のヒントとEQプログラムへの期待について、お話をうかがいました。
(インタビュアー:アイズプラス代表 池照佳代)
※以下敬称略
Q4. 関係性向上のためのマイセオリーとは?

池照: これまでのお話から、人それぞれ関係性のとらえ方や働くことに対して追求する価値観が異なり、環境やタイミングによっても変化することがわかりました。また、0→1で人間関係をつくる、1対組織で関係をふくらませていく、それぞれの戦略やセオリーの違いについても良いヒントをいただきました。関係性を構築していくにあたって、様々な視点が必要ですね。
今回の研修では「EQ(感情知性)をベースに自己理解を深め、自分のマネジメントを見直しし、マイセオリー化する」ことをアウトプットの一つにしています。お二人が、部下やチームマネジメントや関係性構築において大切にしていることや行動のヒントについて、お聞かせください。
今回の研修では「EQ(感情知性)をベースに自己理解を深め、自分のマネジメントを見直しし、マイセオリー化する」ことをアウトプットの一つにしています。お二人が、部下やチームマネジメントや関係性構築において大切にしていることや行動のヒントについて、ぜひお聞かせください。
瀬尾: 先に行動は感情に左右されると言いましたが、感情も行動に左右されるので、自分から明るくあいさつする、お礼を言うといった行動言動を心掛けています。また、会う回数や会話の頻度を上げることでも人間関係が深まります。ここに関係性向上のヒントがあるように思います。

私は社員の皆さん一人一人と話せる機会が限られているので、社長コラムを毎週発信し、思ったことや考えを伝えるようにしています。コラムを通じて社員との接触頻度を上げようとしているわけです。コラムには、「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる。自分が変わることによって人が変わる」というメッセージを多く込めているつもりです。
先日(2022年12月20日)のコラムでは「三配り」について書きました。三配りとは、目配り・気配り・心配りのことです。仕事でもプライベートでも、人間関係の潤滑剤「三配り」を日々心掛ければうまくいくよという内容です。
コラムを読んで行動変容が促され、組織内の関係性が向上し、社員個人や会社の成果につながってくれることを願っています。
池照: 毎週発信されているとはすばらしいですね。読まれた方からの反応はいかがですか?
瀬尾: 毎回400人くらいが読んでくれていて、約1割の方から「いいね」を頂いています。コメントやメールをいただけるのも嬉しいですね。できる限り続けていきたいと思っています。
池照: 感情と行動はつながっているとよくいわれますね。笑うからしあわせなのか、しあわせだから笑うのか。私たちの世代は感情について学ぶ機会がほとんどなく、感情を職場に持ち込むことに否定的でした。
実際は、感情を適切に発信し活かすことで、チームのエンゲージメントを高め成果創出につなげることができます。感情は組織にとって大切なリソースなのです。社長コラムのメッセージ発信は、まさに瀬尾社長が毎週感じとっていることの発信ですね。
井上さんがマネジメントで大切にされていることは何ですか?

井上: 一対一の関係性においては、自分を知り、相手を知ることが重要です。相手を知るため、まず自分を知ってもらうよう心掛けています。そのためには、対話が重要だと思っています。
孫氏の兵法に「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」という有名な一節があります。もちろん私たちは敵でなく味方ですが、対話を通じてお互いを知ることが大切です。コロナ禍で対面の場が持ちにくくなったので、今回の研修のように相手と向かい合い、相手の言葉に耳を傾け、自分の言葉で伝えられる時間は貴重ですね。
また、総務部の役割として「人と人を結びつける結接点」の役割があります。結びつけるためには、その人を知らなくては結び付け方を見いだすことができません。その人の他評、自評の収集はもちろんですが、自身でその人と対話することは必須だと考えています。
対話の際は、笑顔と「ありがとう」の言葉を大切にしています。昔、鏡を見て笑顔の練習をしたこともあります。
池照: 笑顔を意識する、ステキですね。印象をつくるのはコミュニケーションの第一歩。欧米の方は口元で笑うスマイルを作り、日本人は目元でスマイルを作るのだそうです。目元の表情で笑うようにすると周囲にも感情が伝わりやすいので、リモートでのコミュニケーションにも取り入れられる工夫のひとつですね。
Q5.リモートでの関係性づくりのヒント
池照: 井上さんから「コロナ禍で直接対面の場がなかなか持てない」とのお話がありました。同時に、リモートでのコミュニケ―ションの取り方について、課題を感じている方もいらっしゃいます。リモートで関係性を作るにあたり、お二方は何か気を付けていることはありますか?
瀬尾: オンライン会議を顔出し必須としている会社もある中で、当社では顔出ししないのがデフォルトになっています。映像をオンにすると通信負荷が大きくなって、つながりにくくなるので映像オフにしたのだと思います。通信状態が良くなった今、顔出しした方がよいのではという意見もありますが、映像オフにはリラックスして参加できるメリットもあるので、私はあまり気にしていません。昔、メール利用が始まった頃、電話や対面で話さなければ伝わらない、といって反対する声もありましたが、皆が使わざるを得なくなり、メールは今では当たり前になっています。それと同じで、リモートの課題についても時間が解決してくれるでしょう。
池照: ありがとうございます。井上さんはいかがですか?

井上: コロナ禍で採用面接をリモートですることになりましたが、やはり最初は慣れませんでしたね。対面で質問をすると、あまり間をおかず返答がありますが、リモートだと質問自体が伝わりにくく、時差がつらい時もありました。その後は、質問する際に、選択肢を渡すようにしました。その方が、リモートの場合は会話がスムーズになると感じます。
池照: なるほど、大変勉強になります。研修参加者の方からも、リモートでの関係性づくりの難しさについてご質問がありました。リモートが働き方の選択に加わったのはここ数年の話です。メリットや課題を整理しながら「どうしたら関係性向上につながるか」をあらためて考える時期かと思います。数年経ったらこれが当たり前の世界になるでしょう。
私たちの日ごろの工夫を集めて、お互いに切磋琢磨していく、取捨選択していくことが必要なのだなと感じています。
みなさんの本音の質問、そして、お二人にはご自身のご経験からご回答いただき、ありがとうございました。
※社名・役職などはインタビュー当時のものです。(インタビュー日:2022年12月)
池照のまとめ

皆さんにとって、「関係性」とは何でしょうか?
人と協働し、チームで成果を出すことが大切と理解しながらも、「関係性」はこれまであまり着目されることがなかった分野でした。あらためて、「関係性」に焦点をあてたのはなぜか、それは今回のインタビューで読み解くことができます。
今回、瀬尾さん、井上さんの組織トップお二人にお話しを伺い、私が確信したのは「関係性」はリーダー自身の自己理解と自分ゴト姿勢そして、小さな行動の積み重ねから成り立っていることです。
だからこそ、今回のプログラムでは、リーダー一人ひとりがEQ(感情知性)をベースに自他の「関係性」と向き合い、自分発で自分のセオリーを自ら構築、発信、実践することを目指しました。
プログラムやインタビューを通し多くの皆さんが実践の過程でコメントをお寄せくださいました。
そこから、私自身があらためて重要な視点と気づいたのは以下の点です。
- 感情を活かす:誰もがもつ「感情」に着目し、知り活かすことが自分やメンバー理解につながること
- 違いを力にする:一人ひとりの「強みや特性」に違いがあることを認識し、違いを力にする意識と行動が必要なこと
- 関係性をつくる:関係性に唯一の正解はなく、私自身と大切な人(メンバーや顧客)との心の距離をマネジメントし続けること
感情、違い、関係性づくり、どれも“目に見えない”ものを見出し、言語化し、誰かと共有する、新たなチャレンジだったかと思います。このチャレンジに、多くのリーダーの皆さんが正直なコメントや質問を発信し、互いに解決しながら一歩を踏み出したのが今回のプログラムでした。
おわりに、参加されたリーダーのコメントで、私が思わず大きく頷いた一文をご紹介します。
「仕事をする自分が幸せを感じていることにあらためて気づけた。こんな気持ちは初めてでした」 思わず笑顔になったとても嬉しいコメントです。ありがとうございました。
ご担当者からのコメント

コロナをきっかけに世の中の働き方は大きく変化し、当社でも職場内で関係性を築くことが難しくなったという声をよく聞きます。今までのようなコミュニケーションが通用しない時代になりましたので、私たち従業員も時代に合った関係性の築き方について考えなければなりません。
その第一歩としてEQプログラムを導入しましたが、「感情」という目には見えない題材であったため、相手の感情に対する向き合い方について困惑しているという感想もたくさん寄せられました。自身の感情を相手に伝えるということにも、不安や抵抗があったのではないかと思います。
時間のかかることではありますが、瀬尾社長・井上部長の経験談がそれぞれ異なるように、関係性構築の答えは一つではなく、試行錯誤を繰り返して自分自身で見つけ出していかなくてはなりません。
今年度は管理職を対象とした研修を実施しましたが、EQプログラムを通じ、関係性構築のためには従業員一人ひとりが次の一歩を踏み出していくことが大切であると感じました。
アイズプラスからのご紹介
アイズプラスでは、EQ(感情知性)を人材開発、組織開発、人事制度設計に導入し、
以下のような組織目的達成のお手伝いをしています。
・企業理念の策定、浸透支援
・リーダーシップ開発/リーダー育成
・ダイバーシティ&インクルージョン/多様性施策構築、浸透支援
・エンゲージメント施策、タレントマネジメント施策構築と浸透支援
・「心豊かに働く」をベースとした人事制度の構築
・・・ 他