【インタビュー前編】日本マクドナルドのOpen Doorな挑戦

【インタビュー前編】日本マクドナルドのOpen Doorな挑戦

〜現場のモヤモヤは「タニモヤ」で解決する〜


こんな課題を感じている企業に

  • ダイバーシティ&インクルージョンを社員一人ひとりに自分ごと化させたい。
  • 女性活躍推進だけに止まらない次のアクションを進めたい。
  • トップコミットメントと現場社員に温度差を感じる。
  • 人事スタッフとしてダイバーシティ&インクルージョンの企業風土醸成に貢献したい。


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 日本マクドナルド株式会社は、企業として定めた5つのOur Values(私たちの価値観)の一つに「Inclusion – オープンドアの精神で多様性を活かします – 」を掲げ、女性やプレミアムエイジ(シニア)の活躍推進など、長年に渡って(ダイバーシティ&インクルージョン(以下D&I))に取り組んできました。インクルージョンへの取り組みが評価され、2017年度には、国際的にダイバーシティを推進する非営利団体カタリストより、日本におけるロールモデルを表彰する「カタリスト特別賞」も受賞しています。
 そんな日本マクドナルドにおいてD&I推進を担う組織横断型の「オープンドア・プロジェクトチーム」の方々と共に、アイズプラスが開発・提供している「タニモヤ」ワークショップを管理職約200名の方に行うというプログラムを実施しました。
 D&I推進に関してこれまでに一定の成果を上げていらっしゃる日本マクドナルドに、どのような課題があったのでしょうか? また、ワークショップを実施したことにより、どのような変化が生まれているのでしょうか?
プログラムで協働させていただいたオープンドア・プロジェクトチームの植村麦生様と甲斐晶子様にお話を伺いました。


こだわりの「自分ごと化」

池照: 今回は御社のオープンドア・プロジェクトの一環として弊社のワークショップに一緒に取り組んでいただきましたが、導入した背景を教えていただけますか?

植村さん: 日本マクドナルドは、D&Iには長い間いろんな形で取り組んできましたが、会社やビジネスを取り巻く環境の変化も早く、改めてその現状認識と課題に対して明確に取り組もうということで、新たに「オープンドア・プロジェクトチーム」を立ち上げ、その活動の一環として、池照さんにご依頼させて頂きこのプログラムを始めました。
私たちの会社では経営層がD&I推進のコミットメントを明確にしていますが、さらに私たちのプロジェクトでは、従業員の意見に耳を傾けながら新しい制度の導入や意識改革を行っています。その中で、D&Iの取り組みを自分ごと化することを目指し、まず部長層にワークショップを実施しました。そして、今回は、さらに現場に近い管理職層にワークショップを行ったという経緯です。

池照: 御社の中で長年、D&Iを浸透させるいろいろな取り組みをしてきて、「今年はここだけは譲れない、今年のこだわりはここだ」という新たな部分はありましたか?

植村さん: マクドナルドにはもともとインクルージョンの価値観や文化があります。私たちの店舗では高校生や大学生、主婦の方、シニアの方など24時間ありとあらゆるお客様をお迎えしており、ご利用動機も多様です。さらにはドライブスルーやデリバリーなど日本各地で多様な形態のビジネスモデルを展開しています。ですから、多様なお客様をお迎えする私たち自身が多様性を持って仕事をしていかないと成り立たちません。それは過去の取り組みからも多くの社員が理解しています。
一方で、日々の仕事や自分のチームにおいて、しかもコロナ禍の中、「どうやってD&Iを実現していくか」という“HOW”に関しては、モヤモヤを持っていると感じています。そこを何とか打破したく、今年はそのきっかけの一つをつくりたいという思いがありました。

池照: ありがとうございます。甲斐さんはいかがですか?

甲斐さん: 日本マクドナルドのD&Iの活動は2008年頃から強化されていますが、その前から女性活躍推進については取り組んでいました。私も店長だった時代に女性スタッフを増やすように言われ、「そんなに女性、女性と言われても…」と、自分が女性だからこそ懐疑的だったのを覚えています。今回改めてD&Iを推進するためにオープンドア・プロジェクトが立ち上がり、管理職・マネージャー以上を対象に取り組みを実施するにあたり、組織をリードする管理職の方々に「自分ごと化してもらうんだ!」という所にかなりこだわりました。


「タニモヤ」で気づいたアンコンシャス・バイアス

池照:「自分ごと化」はキーワードでしたよね。そのために今回は「タニモヤ※」という、自分たちの課題を自分たちで解決するための、ワークショップに一緒に取り組んでいただきました。最初に私がこれをご提案した時には、なんだかよく分からなかったのではないかと思います(笑)。でも、やってみよう!と思ってくださったのはなぜでしょうか?

※「タニモヤ」とは?
他人に自分のモヤモヤ(課題)の解決策を考えてもらうことで、相互理解と具体的なアクションにつなげるアイズプラス独自のワーク。組織の目的や目標をメンバーに自分ごととして捉えてほしい時に有効。
https://is-plus.jp/tanimoya


植村さん: 皆でディスカッションするので何が生まれるか分からないという不安が初めはありました。私たちが“してほしいディスカッション”や“出してほしい答え”に導かれるのか? という心配です。でも、実際にディスカッションがスタートすると無理やり導く必要はないなと思い直しました。さまざまな意見や視点が出て、中には納得できないという人がいたとしても、それは多様性を認めるということでいいんじゃないかと。今までの私たちのD&I推進はどちらかというと「会社の進む方向性や思想に近づけていく」という感じだったので、こ、自分ごと化できなかった理由の一つではないかと思ったんです。
実際にワークショップでは「自分なりのオープンドアって何だろう?」と皆さんがかなりディスカッションすることになり、自分なりの答えを見つけたり、やっぱり難しいんだということに気づいたりされていてました。
また、ワークショップの運営ではプロジェクトメンバーがファシリテーターをしてしまうと、どうしても「マクドナルド」が主語になってしまいますが、そこをアイズプラスさんにご協力いただくことで参加社員の自己開示が進み、自分たちが本当に思っていることを話し合えたと感じています。

甲斐さん: 個人的にすごく面白そうな取り組みだと感じていたので、私は最初からやりたいと思っていました(笑)。ディスカッションをしている中で皆さんから「こんな話していいの?」という声も聞こえ、多くの方がふだんは上司にも部下にもできない話をされていたことは非常にプラスになったのではと思っています。自分のモヤモヤは自分で解決しろと教わってきていて、人に言ったら甘えになるんじゃないか、評価が下がるんじゃないかという恐れがあった中で「今日は開示していいんだ!」と分かってきて、皆さんかなり赤裸々にお話しされていました。
最終的には、同じ職位同士の横のつながりを感じ、他部署の話に共感し、自分自身にこんな悩みがあったという発見など、参加した社員は考えていた以上にいろいろな新しい気づきを得ているようでした。