「共感」から「共創」へ。新たな価値創造に向け、今こそ社員に必要な“感情”の力

「共感」から「共創」へ。新たな価値創造に向け、今こそ社員に必要な“感情”の力


世界150カ国で事業を展開するグローバル企業 コニカミノルタ株式会社は、2017年に代表執行役社長 兼 CEO山名さんの強い意志のもとダイバーシティ推進室を設立。「違いを力に!」をスローガンに、社員一人ひとりの輝きを組織の成果につなげていくための取り組みを行なっています。株式会社アイズプラスは、このダイバーシティ推進室の発足支援を行うと同時に、EQ(感情知性)を取り入れた人材・組織開発をご提案し、2017〜2020年の4年間で、コニカミノルタ株式会社の女性社員、管理職600名近くの方々にEQのアセスメントとワークショップを行なってきました。



なぜ今、企業に「共感」が必要なのか?

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池照:ビジネスの現場における「共感」について、改めて今メッセージを出されたのはなぜですか?

山名さん:昨年、自社の長期ビジョンを再構築しました。今後の会社のパーパス、「何のためにコニカミノルタは存在しているのか?」を社会的意義という形で捉え直すために。そして「Imaging to the People /お客さまの『みたい』を実現する」という経営ビジョンステートメントを発表しました。これを事業戦略に落とし込む際に、その戦略は会社を構成する社員一人ひとりが「自分がそれを実現したい!」と思うものでないといけません。ワクワクしながらそう思える「ストーリー・物語」が大事です。社員みんなの心がそのストーリーに揺さぶられ、自分の腹にガツンと落ちていること。「共感」という感情移入が起こり「自分ゴト」になること。会社の明確な変化点をつくるために、ここを今一度大切にしたいと思いました。

そして自分ゴト化できたとしても、それだけでは成果は生まれません。チームの力にするにはやはり目的意識を共有して、同じ志で共感し合うことも大事です。さらにこれからの時代は、パートナーとなる他社やお客様も含めて「チーム」と捉え、共感し合って、一緒に新たな価値をつくり出すことが成果につながります。

①共感して自分ゴト化する
②チームで共感する
③会社を超えてお客様とも共感し合う

この3つの領域で、いま一度「共感」の力を奮い立たせたかったのです。


「共感」を生むためには「感情」の言語化・表現力が重要

池照:その「共感」をどうやってつくり出すかという時に、言語化が大切になりますよね。数値目標だけでなく定性的なもので、120%の成果を出すために一緒にどのような世界を見たいのかを表現できる力が必要です。

山名さん:「物語」は数字じゃない、経済価値でもない。そこを大事にしないといけませんよね。だから今回、各事業・機能本部のトップである役員にそれぞれの想いを文章化し語ってもらいました。数字だけでは人は共感しない。人間としての共感を引き起こす物語を、会社としてきちっと大切にします。それが共感の第一前提です。

そして今度は一人ひとりがそれを「自分の物語」にしないといけない。会社の物語に自分の想いや感情を乗せて、自分の物語をつくることが重要です。100人いたら100の感情がある。自分の物語には自分の人生観を思い切り出したらいい。それが「違いを出す」ということです。みんな価値観が違うんだということを認め合いながら、想いをぶつけるんです。主観のない客観では腹落ちしないし、主観を自己主張だけで終わらせたのでは共感は生まれない。主観と客観の間には「思いやり」があるべきです。お互いに違いを認めて一緒に何かをつくり出そうとする根底には「思いやり」が必要ですよね。

池照:自分の主観を強め、かつ相手への理解を深めながら影響を与える。私は、感情知性(EQ)を取り入れた人材・組織開発やコンサルティングを行っていますが、この「主観を強める」「相手への理解を深め影響を与える」の2つをEQに取り組むことで開発できます。具体的には、EQが発揮できる行動やスキルを知り、身体で覚え、それを習慣化(クセに)することで開発が可能になります。その一例として、コニカミノルタのワークショップの中で、部下や周りの人をモチベートするトレーニングとして、思い浮かべたその人を元気にする言葉を3分間で思いつく限り挙げるということしています。すると、30個以上の言葉を出せる方もいれば10個未満の方もいて、「まずは共感を生むための語彙が少なかった」と気づく方もいらっしゃいます。あるいは、「少し恥ずかしかったけど思い切って自分の気持ちを伝えたら、思った以上にポジティブな反応が返ってきてうれしかった」と感情の大切さに気づく方も。山名さんご自身は、感情の大切さについてどのように思われますか?

山名さん:コニカミノルタグループの中でも、例えばヘルスケア部門などは、人の命を救うための診断に使う画像領域の事業であり、命の現場に貢献しているという実感がありますよね。病院でこんなことがあったよという声が、感動やヤル気に直結します。しかし、そういう直接的な感動から少し遠い部門もあるわけです。私はそこを分け隔てなく、社員全員がどうやったら感動に向き合えるだろうかということを常に考えています。自分ばかりではない他者に何かが通じて、そこから得られる感動、リフレクションこそ本物の感情だと思うんです。それを経験するとモチベーションが長続きしますよね。

池照:日本人は昔から「言わなくても分かるよね」という文化がありますが、これから多様性の中でどうやって共感をつくっていくのかという時に、想いや感情を感じ取る力や、表現する語彙力、発信力を高めていくことがますます重要になりますね。


「共創」へ向かうために必要な「柔軟性」

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池照:山名さんは年頭メッセージの中で、「共感」からさらに「共創」についても触れていらっしゃいますが、国内外の多様な人々と一緒に新しい価値をつくっていくためには何が重要だと思われますか? 私はCuriosity、面白がることだと思います。

山名さん:Curiosityは物事を生み出す出発点になるので非常に大事ですね。もう一方では、自社の中で誰もが「共感から共創する」という価値観を持たないといけません。チームで成果を上げるのも一つの共創ですし、他社やお客様と共創するには、一段レベル高めた目的意識の共有が必要です。これからの共創では、大きな企業同士がパートナーになるだけではなく、大企業がスタートアップ企業と一緒に取り組むようなケースもたくさん出てきます。そのような場合、ともすると「ここは自社の方が優れている」と上から目線で見てしまうとか、大企業の決定に時間がかかり、スタートアップ企業とスピードが噛み合わない、などということになりがちです。そういう時に、相手に対する本当のリスペクトと、共に生み出す価値の目的共有が大切になる。今まであったものの延長なら自社だけでもつくることができるかもしれませんが、どこにもない新たな価値をつくろうという時には、一社のコンセプトだけでは限りがありますし、そういう時に上から目線も何もあったものじゃないですよね。

池照:今までにないものをつくるには、今まで通りのやり方ではできないですね。自分のパターンとは違うことや新しいことを取り入れていく感覚のことを、EQでは「柔軟性」と言っています。実はどんな企業でも、上司になればなるほど柔軟性が低下するという傾向があります。でも柔軟性が低いことのメリットにつながる特性もあって、それは決めたルールはしっかりと守る傾向があるということ。であれば、これから取り組むことの中に必ず10%は新しいことを取り入れると決める、新しいことは、これまで付き合いのなかった人や社外の人と一緒に取り組むと決めて挑戦してみる。そうすることで「柔軟性」を高めることにつながります。EQは良し悪しの判定ではなく、自分や相手の感情を理解してマネジメントするためのものなので、「共感から共創する」ために具体的に活用していけると思います。


山名さん自身がこれから「みたい」世界

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池照:最後に、山名さんご自身がこれから「みたい」と思う世界についてお聞かせいただけますか。

山名さん:私自身のことで言うと、人間誰でもある年齢が来ると、どのような人生の終わり方をするのが自分にとって良いと思えるのか、そういう所に考えが行きます。そこで思うのは結局、「自分以外に誰を幸せにできただろうか? 自分以外の人にどう関われただろうか?」ということです。「利他主義」とは、自己の利益よりも、他者の利益を優先する考え方ですが、他者にとって利することができた人生であったか、そこに行き着くように思います。それは人間が持っている思いやりの心がベースになっているものだから、それが結実している世界・社会が見たいと思いますね。資本主義に代わる在り方は、まだ誰にも分からない。資本主義は、働いたら自分も子孫も豊かになって、自分が報われるから分かりやすかった。でも、ポスト資本主義社会として、みんなが相手を思いやる「利他の心」を持つ社会が定着するのであれば見てみたいですね。

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対談日:2/17(水)
コニカミノルタ本社にて


プロフィール

山名 昌衛(やまな しょうえい)
1977年ミノルタカメラ株式会社(のちのミノルタ株式会社)に入社。新興国の市場開拓、英国駐在等での海外販売や、全社経営企画に携わった後、買収した米国プリンター会社のCEOを務める。帰任後は、ミノルタの執行役員として、企画本部経営企画部長と情報機器事業統括本部副本部長を兼任し、コニカとミノルタの経営統合推進の一翼を担った。
2003年の経営統合以降は、常務執行役として経営戦略を担当、2006年には取締役 兼務 常務執行役として情報機器事業を率いる。2013年取締役 兼務 専務執行役(情報機器管掌)に就任、2014年4月より代表執行役社長に就任し、現在に至る。
社長就任後は、顧客の潜在的課題を先取りして共に解を生み出し、ビジネス社会・人間社会の進化を支える「課題提起型デジタルカンパニー」を目指し、強いリーダーシップを発揮している。デジタルビジネスへの取り組みに関する外部講演多数。


こちらもぜひご覧ください。

⚫︎コニカミノルタ株式会社 ダイバーシティ推進室(現:違いを力に!推進室)インタビュー
https://is-plus.jp/features/interview03-1
https://is-plus.jp/features/interview03-2

⚫︎早稲田大学ビジネススクール入山先生インタビュー【コニカミノルタの挑戦】
https://is-plus.jp/features/interview00-1
https://is-plus.jp/features/interview00-2

 
こちらの記事の英訳もございます。
https://is-plus.jp/features/interview09-1en


アイズプラスからのご紹介

アイズプラスでは、EQ(感情知性)を人材開発、組織開発、人事制度設計に導入し、
以下のような組織目的達成のお手伝いをしています。

・企業理念の策定、浸透支援
・リーダーシップ開発/リーダー育成
・ダイバーシティ&インクルージョン/多様性施策構築、浸透支援
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