橋本賢二さん対談記事記事 第2部

第2部

働き方は選択か創造か?

〜人生100年時代に必要なこと(全2回)〜
【後編】働き方を自分で選択・創造して行く時に必要な教育とポイント

人生100年時代には、秋冬のおしゃれを楽しめる!

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池照:人生100年時代と言われる中で確実に働く時間が長くなりました。これからどんな風にキャリアを設計したら良いのかという課題は、関心も高いところです。私は企業の副業・兼業導入支援やキャリア開発などのコンサルティングを手がけているのですが、会社としては制度を整備しても実際に副業・兼業をスタートさせる人が意外と少ないという悩みもあるようです。自分のスキルや経験を活かして副業・兼業の制度もあるからと意識はあるもの、まだ具体的な活動に着手していないケースですね。

一方、働く=会社の中でキャリア完結させるという考えの方もいらっしゃいます。それも働き方の選択だと思います。「60歳までなんとか会社に居続けよう。あわよくば延長雇用で62、3歳くらいまで」となった場合、この“居続ける”ことがポジティブな影響力を発揮しているならよしですが、中にはそうとは言えない方もいらっしゃいます。“居続ける”のであれば、これまでの経験やスキルを次の世代に活かす方向にして欲しいものですが、メンタリティとしてそうはなれない方も多い。人生は会社員だけで終わる訳でなく、本当はもっと先は長いはずです。

私は最近、いろんな会社で「春夏秋冬」というワークを実施しています。100年人生を前提に、人生を25年ずつで区切って絵を描いていきます。0~25歳を春、その次の25年を夏としてそれぞれに自分がその時間に何をしていたかを絵で描きます。これからくる季節については“どんな風になったらよいか”を絵にしてもらう簡単なワークです。これをやると、会社ではシニアと呼ばれる50歳以上の方でも人生の秋冬は「これから」迎えることになります。つまり、人生の半分はまだこれから描くことになる秋冬の季節、たとえ定年まで会社にいることを想定していても、秋・冬の多くの時間は会社外の時間となります。そしてこの時間は、一番おしゃれができる!人生の秋・冬コレクションをどう着こなしていけるか?どんな過ごし方をしたいか?というのがこのワークの問いなんですが、描いてもらうとすでに仕事や社会から離れて隠居を、、、なんて方もいらっしゃる。

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橋本さん:いちばんおしゃれが盛り上がる秋冬というシーズンが残っているのに!(笑)おそらく人生を60歳まででしか想定していないんですよね。会社しかないから、あと10年という発想なんです。世界を狭く見ていたのが、広く見られるようになれば、気持ちが会社以外にも向き始めると思うんですが。

人事系のワークで、「あなたのキャリアはWill・Can・Mustの重なり合った所ですよ」とよく言われるじゃないですか。そうすると、そこにはまるものじゃなきゃダメだと思ってしまう。私はこれを「Will・Can・Must症候群」と呼んでいますが、そんなものは最初からあるわけじゃない。何がはまりそうなのかは求めて行かなきゃ見えてこないし、「Do」を付けなきゃ意味がない。頭で考えすぎてきた人は、「Do」にいきなりめちゃくちゃ重いものを入れようとするから大変なんです。

池照:「起業!」とか(笑)。そこに至る最初のステップが「まずは町内会のイベントの手伝いをする」だったらすぐに一歩は踏み出せるのに。


たくさん失敗し、「好き」からスタートする

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橋本さん:「Do」も細分化してスモール設計にすればすごく軽くなりますし、そういうマインドを早いうちから持てたら、行動の幅が広がって幸せも広がりますよね。気づいたんだったら今、何か小さなものをDoしてみませんか、と。

池照:この人生の春夏秋冬という考え方は、作家の山口周さんとパネル登壇していた時にうかがったものなのです。ご一緒した際に、この秋冬を迎えるにあたり、夏にすることは何かと話していて、2人で一致した意見が「たくさん失敗すること」でした。夏に様々な刺激を受けると、秋に実はより甘くなります、経験を積んだ人の方が実りが多い。経験は会社以外でもどこでもできるので、まずは失敗を恐れずに経験値を増やし、行動することが大切なんです。

私がかつて外国人の上司によく言われていたのが「Ready, Fire, then Aim.(構えたら狙わないで撃て)」。気持ちの準備ができたらとにかく手足を動かしてみる、失敗したら次の機会が来た時に少しずつねらいを絞っていけばいい。機会はまたくる、失敗にひるまずに次の機会をつかみ、次の挑戦の時に、周囲からの支援をうけるために信頼関係をつくれと、本当に素晴らしい言葉と応援だったと思っています。

橋本さん:選択肢が増えて、可能性もいろんなことがあり得る時代に、のんびり狙いを定めていたら遅れますよね。ビジネスや体験もアジャイル化(短期間でトライ&エラーを俊敏に反復しリスクを最小限に抑える開発手法のこと)してきているので、一つのことを真面目にずっとやるのが美徳だと決めつけられない傾向が出始めています。私はそれを良いことだと思っていて、自分が本当に嫌なものを一生懸命頑張ったって苦痛にしかならないので、であれば早々に切り捨てて違うものを齧ってみてもいいし、やはり齧らないとおいしいかまずいかも分からないですからね。

池照:橋本さんと話をしていて、「働き方は選択したり創造するもの」にとても共感しました。正社員、契約、そして、副業・兼業など、今は働き方も選択枠が増えています。以前のように、正社員か起業かという白か黒かだけでなく、正社員と副業、起業しながらプロボノなど、様々なグレーを独自にブレンドできる時代になりました。自分のキャパシティの中に入れられるのであれば、このグレーを自分でつくっていけるんです。私はこのグレーを自ら表明しちゃえばいいと思っています。「今はこれがやりたくて、正社員としてフルコミットしている。でも3年後に子どもが学校に行くようになったら、違う働き方を組み合わせて挑戦したい」というような。自分自身の学び、家族の成長ステージなど、その時に何が最適で次の季節をどう描けるのかで選択ができるとよいと思っています。

橋本さん:まさに、ポートフォリオみたいな感じですよね。

池照:IC(インディペンデント・コントラクター/独立業務請負人)という働き方にしても、一旦ICになってからICでなくなることをネガティブに捉える人も多いのですが、ICから正社員に、そしてまたICになるなど、生き方や時間の使い方によって行き来ができる世の中になればいいなと。

橋本さん:行き来はまだ社会のハードルが高いですね。ただ「働き方の創造」というと重いので、「選択」というのもあるよと。いきなりゼロからイチなんて生み出せない。だからこそ、何も分からないんだったら目の前のことに取り組んでみるのは大切です。何か少しでも興味・関心や好き嫌いがあるなら、好き・興味あるものから齧りついていって選んでいく。そうするとだんだん自分ができることが見えてきて、創造につながって行くんだと思います。


伸ばすべきは「表現力」と「決断力」

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池照:そんな社会にしていきたいと思った時に、向こう10年くらいで、学校や家庭での教育や声がけがどのように変わっていったらいいと思いますか?

橋本さん:私が今の教育…これは大人の教育、人材育成も含めてですが、足りないのは「表現力」と「決断力」だと思います。表現力が足りないのは、自分の考えや思いを出す場がないというのと、出す場がないから結構あいまいなまま自分の中に留めている、という2つに起因している。言語化せずに抽象的な状態で自分の感覚や意見が終わってしまっているんですね。考える人を育てるためには、表現をさせないといけない。

池照:飲み屋レベルで「全くやってらんないよな」で終わらせてしまいがちなところはありますよね。愚痴がダメとは言わないですが、一度昼間の時間に真面目に時間とってやってみると本質的な問題が見いだせたりする。

橋本さん:考えをまとめるのも、発言して一緒に建設的にしていくのも、全ては言葉が問題になります。言葉の不自由さを自覚しないと言葉に敏感になれないので、表現して、いろんな人からフィードバックを得ながら自分の言葉を磨いていくことを積み重ねないと、なかなか自分のポリシーを持つだとか、自分はこう思うという所まで至れないですよね。

池照:考えない会社員時代を私もずっと過ごしてきました(笑)。その頃、上司から必ず問われたのは「Why?(何故)」「Is that true?(それは本質課題)」「Is that all?(他に選択できることは)」、この3つなんです。毎回聞かれていたので、さすがに数年後には考えるようになってました。この3つの問いは、いまでも私の中で物事を意思決定する際の「問い」なんですよ。

橋本さん:そういう「自分の中での問い立て」って重要だと思うんですよね。私は「なぜなぜ?」を5回するんですが、どんな些細なことでも「なぜ?」って突き詰めると、結構しんどいんです。そのしんどさも慣れで、意識的に続けていれば、無意識的にできるようになる。守破離に近い。表現も決断もトレーニングを重ねないと質は高まらない。

池照:これは学校教育でも社会人でも一緒ですね

橋本さん:「決断」ではなく「判断」することすら保留する人もいます。本当は「決断」すべき問題を「判断」にして先送りするケースも多いんです。判断だけだと永遠にできない問題もあるから、それに対しては決断する必要がある。

池照:私が取り組んでいるEQ(感情マネジメント)という領域はまさにここなのです。過去やってきたことを評価しながらするのが「判断」ですが、判断だけでは行動が伴わない。未来に向けて動きだすには「決断」が必要です。決断は、自分の心の状態を理解し、踏み出す感情を作り出すことが必要なんです。

橋本さん:判断は、ある程度材料が揃っているからできるんです。でも、材料がどんなに頑張っても揃わない時は、もう決断するしかない。

池照:この記事を読んでいただきたいなと思っているのが、今まさにキャリアに悩んでいる方々なんですが、アドバイスをいただけますか?

橋本さん:日頃から小さな決断をして、それに理由をつけてみるということでしょうか。それを感覚的に選ぶんじゃなくて、理由をつけるには表現が必要です。小さな決断だから別に命に関わるわけじゃないですが、でもそうやってトレーニングしていく。

池照:意図を持って小さな決断を重ねる。そしてそれを楽しむということも大切ですよね。自らの選択と個性の発揮、表現と決断、そしてとびきりの笑顔が、だれもが迎える秋冬コレクションを最高におしゃれにしていきますね!


  1. 人生100年時代、折り返しの50歳以降こそこだわりの秋冬コレクションを!
  2. 「好き」から選択し行動することから世界が広がる
  3. 決断力と表現力を磨き、まだ出会ったことない世界を楽しむ

池照さんとの対談を経て

池照さんと私では、これまでの環境や経験が全く異なるにも関わらず、長時間も話が弾んだことが純粋に嬉しかったです。働き方は創造できるとか言いましたが、普段の私は公務員なので選択の余地すら少ないかもしれません。でも、それは仕組みの話であって、働くことと向き合う気持ちまで抑えられているわけではありません。改めて働き方を変えるのはものの捉え方で、個人の考え方が大切なのだと感じました。この対談が読んだ方の未来をちょっとでも良くするきっかけになれていれば幸いです。

橋本さんとの対談を経て

随分前に見たTV番組で、フランス人の高齢女性が「10年後に着る服」を毎年購入しているのを見たことがあります。「10年後もこのブランドの服を着る」と決め、ステキな仕立てのジャケットを購入して誇らしげに着こなします。年を重ねることを恐れるのでなく、10年後もこのジャケットを着て颯爽と歩く自分をイメージしている彼女は、本当に素敵な方でした。私たちは、思っていたよりも長く生き、働き、思っていたよりも多くの多様な人と何かを一緒にやる時代を迎えそうです。想定していない世界かもしれませんが、自分自身が「どうありたいか」は常に自分で決め、表現することができます。今回、橋本さんとこのような機会をいただき、常に柔軟な発想で未来を語る姿は、「10年後の自分」を自ら彩り表現する女性の姿と重なりました。10年後の自分を格好良く、おしゃれにできるのは私たち自身です。生きてきた経験をいかし、「決断して、表現して、おしゃれを楽しむ」そんな橋本さんのような公務員が増えたら、いえ、公務員に限らず大人が増えたら、日本はおしゃれに年を重ねる大人がいっぱいな場所になる。心からそう思えた時間でした。


プロフィール

橋本賢二
2007年人事院採用。国家公務員の採用試験の見直しや国家公務員の給与を改定する人事院勧告のとりまとめ担当を経て、2015年から経済産業省に出向して産業界の成長に資する人材育成に関する施策を担当。現在は人事院に戻って採用を担当するとともに、各地で教育関係者や企業人事担当者に向けて、キャリア教育の重要性やこれからの働き方に関する講演もしている。

※橋本の発言は個人としての見解であり、所属する組織の見解とは全く関係ございません。


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